この記事では、新たな資産運用先として人気を集めている「ロボアドバイザー」口座を比較します。
- ロボアドバイザーとは一体何なのか?
- おすすめのロボアドバイザーはどれ?
- リスクはあるのか?
といった基本的なところからわかりやすく解説していきますので、ロボアド初心者にもきっと参考になると思います。
目次
ロボアドバイザーとは
ロボアドバイザーとは、「資産運用の代行を、生身の人間を介さず、ウェブ上で完結させるサービス」のことをいいます。
かつては、資産運用の代行を「運用のプロ」に依頼するには、証券会社や銀行の店頭に足を運んで、職員から口頭で説明を受けてから口座を開設し、アドバイスに従って運用を開始する、というふうに、時間と手間をかけなければなりませんでした。
また、口座開設の際には、数千万円以上という高額な資金を要求されました。
それを、1万円からの口座開設を可能にしたのがロボットアドバイザーです。
対面による個別的なサービスを、ウェブ上での自動サービスに合理化することによって、大幅な人件費削減に成功した結果です。
これまで富裕層向けだった「資産運用代行サービス」を、時間・手間・資金のいらない「身近で」「手軽な」ものとして、広く一般に開放したのがロボアドバイザーなのです。
ロボアドバイザーには、次の2タイプがあります。
- 実際の資産運用までを代行してくれる「投資一任型」
- アドバイスのみを行う「アドバイス型」
一部のマスコミは、「ロボットアドバイザーとは、投資家に対し、人工知能を利用して資産管理や資産運用のアドバイスを行うシステムまたはサービス」 (デジタル大辞泉2017)として、「人工知能の利用」を要件に挙げています。
しかしながら、2017年12月時点の日本国内すべてのロボアド業者のホームページを隅から隅まで読んでみましたが、「人工知能」の文言はまったく見当たりませんでした。
ですので、「人工知能」をロボアドバイザーの要件とする定義は、少なくとも現時点では勇み足のようです。
ロボアドバイザーは儲かるか?
現時点のロボットアドバイザー投資は「国際分散されたインデックス投資」であり、インデックス投資は、20~30年のスパンを想定した長期投資です。
ですので、「ロボアドって儲かるの?」と問われれば、20~30年という単位で見れば、「儲かる確率が9割以上」といえます。
逆に、1年単位では、「儲かる」とも「儲からない」ともいえません。むしろ、普段は、運用資金が暴騰するリスクよりも、暴落するリスクにさらされる投資法です。
また、1年だけの実績で、各ロボアドの運用手腕の優劣を比較するのも無意味です。
たとえるなら、プロゴルファーの実力を1ホールだけの結果で、棋士の実力を一局だけの結果で、力士の実力を一番だけの結果で判断するようなものです。
ロボアドバイザーを選ぶポイント3つ
「キャッシュインフロー」と「キャッシュアウトフロー」に大きな影響を与える要素が、業者を選ぶ際のポイントとなります。
運用手数料は、キャッシュアウトフローに大きな影響を与えますが、各ロボアド業者とも1%ちょうどか、それを少し下回る程度でほとんど差がありません。
それ以外でキャッシュフローに大きな影響を与えるのは、
- 株価暴落時の対応
- ファンドマネージャーのスカウト
- 節税のアドバイス
の3つになります。
株価暴落時の対応
本稿を執筆しているのは2017年12月、日本ではボーナスシーズンです。ボーナスをロボアド口座に入金してみることにしましょう。
ところが現在は、米国株式が歴史的高値圏。「高値圏での参入」は、ロボアド運用を始めた途端、半額近く減価するという悲劇も招きかねません。
かの世界第二位の大富豪・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ社も、今は手持ちの株を売却して現金比率を高め、株の安値拾いを実行すべく、虎視眈々とチャンスをうかがっているそうです。
THEOによる運用シミュレーション
短期間で運用資産の半分を失う可能性があるということは、逆に安値を拾うことができれば、短期間で資産を倍増させられる可能性もある、ということです。
株式暴落時の対応は、ロボアド投資において、運用成績に最も影響を与える要因なのです。
ファンドマネージャーのスカウト
現時点のロボットアドバイザーはインデックス投資と同義です。が、このことは、ロボットアドバイザーにおいて株価指数(インデックス)以上のパフォーマンスを目指す「アクティブ投資」を採用することを否定するものではありません。
広い世界には長期に渡って驚異的な運用成績を上げているアクティブファンドのマネージャーも実在します。
そのような優秀なファンドマネージャーをスカウトすることもまた、ロボアドの運用成績に大きな影響を与える要因であり、ロボアド業者が自社の差別化を図る有力な手段になるはずです。
節税のアドバイス
運用利益にかかる「税率」は20%と非常に大きな割合です。
非課税枠を有効に活用する「節税のアドバイス」もまた、ロボアド投資において、運用成績に大きな影響を与える要因です。
おすすめのロボアドバイザー
楽ラップ
- 下落ショック軽減機能
- Finatext社、Mercer社、State Streeet Global Advisors社と提携
- リスク許容度を心理テストから推測
- 各運用コースのパフォーマンスデータをcsvで配布
運営会社 | 楽天証券株式会社 |
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セリングメッセージ | 世界で活躍する投資のプロのサービスをあなたに |
ロボアドのタイプ | 投資一任型 |
ロボアド定義 | インターネット完結型の投資一任型運用サービス |
最低投資額 | 10万円 |
最低積立額 | 月1万円 |
利用手数料 | 最大0.990% |
ポートフォリオタイプ数 | リスク許容度に基づき9通り |
主な運用商品 | すべて国内で販売されている投資信託 |
楽ラップは、楽天証券が運営する、投資一任型のロボアドです。
おすすめ選定理由は、業界唯一の「下落ショック軽減機能(TVT)」搭載であること。
Finatext社、Mercer社、State Streeet Global Advisors社と提携する国際派でもあります。各運用コース実績のcsvデータを毎月タイムリーに公開しているのも、好感が持てます。
下落ショック軽減機能(TVT機能)は、株式市場の価格変動リスクが高まった際に、株式への投資割合を減らし、債券の投資割合を高めます。
引用:楽天証券
株価暴落に備えて、ポートフォリオにVIX(恐怖指数)のETFを組み込むことが「攻撃」的であるとすれば、TVTは「防御」に徹するのみですし、楽ラップの「下落ショック軽減機能(TVT)」のスペックは未知数です。
しかしながら、米国株式が歴史的高値圏にある現在、株価暴落への備えは不可欠な要素です。
下に、楽ラップで「100万円の資金を積極的に運用した場合」(左)と、「100万円の資金を保守的に運用した場合」(右)の損益シミュレーションの比較を掲載します。
THEO(テオ)
- 運用ニーズを「グロース」「インカム」「インフレヘッジ」に分類
- スマートベータ型運用
- 投資哲学が明確(創業メンバーによる共著あり)
- 各部門チーフが顔出し(スター主義)
運営会社 | 株式会社お金のデザイン |
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セリングメッセージ | 合理的な資産運用を、みんなのものにする |
ロボアドのタイプ | 投資一任型 |
ロボアド定義 | 人を介さず、ウェブ上で資産運用のアドバイスを行うサービス |
最低投資額 | 1万円 |
最低積立額 | 月1万円 |
利用手数料 | 1.00% |
ポートフォリオタイプ数 | 運用ニーズに基づき231通り |
主な運用商品 | すべて米国市場に上場している海外ETF |
THEOは、お金のデザイン社の運営する、投資一任型のロボアドです。
運用ニーズを「グロース」「インカム」「インフレヘッジ」に分類しているのが特徴的です。
創業者メンバーがロボアドの入門書を上梓して、投資哲学をアピールする、業界きっての理論派です。
各部門チーフが顔出しするスター主義で、広告宣伝戦略もユニークかつ積極的。良くも悪くもベンチャー企業っぽい存在です。
私たちは最大30~40種類のETFで機能別ポートフォリオを作り、機能に合わせて資産配分をしています。
今でいうとアメリカのカルパース(CalPERS)などが、リーマンショック後に採用しているモデルです。
231パターンのポートフォリオをお客さまに提示でき、きめ細かい運用をすることで、リスクを抑えながらリターンを高めています。
インデックス同士を組み合わせることにより、投資信託の設定をしているのでパッシブ運用ではありますが、投資信託の定義上はアクティブ運用の分類になるようなものです。
引用:代表取締役社長 中村仁
おすすめの理由は、あくまでインデックス投資の範囲内ですが、優秀なファンドマネージャーを招いてアクティブ「的」な運用を行なっていること。
THEOでは、国際的な分散のリアロケーション(資産の再分配)を頻繁に行うだけでなく、スマートベータ型投資信託も取り入れるなど、インデックス運用を超えるパフォーマンスを上げることに対して常に積極的です。
将来は、バフェット級の「超々」優秀なアクティブ・ファンドマネージャーの招聘を期待します。
下に、THEOで「小額の資金を積極的に運用した場合」(左)と、「比較的多額の資金を保守的に運用した場合」(右)の損益シミュレーションの比較を掲載します。
- 預り資産、ユーザー数がロボアドバイザー第1位※日本投資顧問業協会(2017/6)
- 税金最適化
- 大手金融機関・政府系ベンチャーキャピタルによる出資
運営会社 | ウェルスナビ株式会社 |
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セリングメッセージ | 国際分散投資を、全自動でおまかせ |
ロボアドのタイプ | 投資一任型 |
ロボアド定義 | 資産運用に関わる全プロセスを自動化したサービス |
最低投資額 | 10万円 |
最低積立額 | 月1万円 |
利用手数料 | 1.00% |
ポートフォリオタイプ数 | リスク許容度に基づき5通り |
主な運用商品 | すべて米国市場に上場している海外ETF |
WealthNaviは、ウェルスナビ株式会社が運営する、投資一任型ロボアドです。
唯一の「税金最適化機能」付きロボアドで、大手金融機関・政府系ベンチャーキャピタルとの提携という、安心感もあります。
預かり資産300億円の業界リーダーに相応しい貫禄があります。
自動税金最適化(DeTAX)は、配当やリバランスから生じる税負担が一定額を超えた場合、含み損を実現させることにより自動的に繰り延べます。
引用:ウェルスナビ
おすすめの理由は、業界で唯一税金の最適化機能を搭載していること。
ただし、DCやNISAに対応したポートフォリオのアドバイスこそが節税の「本丸」とすれば、含み損の自動的な実現は「出城」にすぎません。
「税金最適化機能」のDCやNISAへの拡充を期待しています。
下に、WealthNaviで「小額の資金を積極的に運用した場合」(左)と、「比較的多額の資金を保守的に運用した場合」(右)の損益シミュレーションの比較を掲載します。
マネラップ(MSV LIFE)
- 運用ニーズを「ためる」「たのしむ」「そなえる」に分類
- マイカー・結婚式などのゴールベース方式
- 米国バンガードグループと運用哲学を共有
- 万全のアフターフォロー
運営会社 | マネックス証券株式会社 |
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セリングメッセージ | 本格的な資産運用計画をすべての投資家に |
ロボアドのタイプ | 投資一任型 |
ロボアド定義 | 投資目標を決めて、ロボットが全自動で運用するサービス |
最低投資額 | 1,000円 |
最低積立額 | 月1,000円 |
利用手数料 | 1.00%未満 |
ポートフォリオタイプ数 | リスク許容度に基づき8通り |
主な運用商品 | 国内で上場されているETF |
マネラップは、マネックス証券株式会社が運営する、投資一任型ロボアドです。
運用ニーズを「ためる」「たのしむ」「そなえる」に分類するのが特徴的で、マイカー・結婚式などのゴールベース方式をとっています。
おすすめの理由は、万全のアフターフォロー。米国バンガードグループと運用哲学を共有し、万全のアフターフォローが自慢です。
ロボアドの本質が「資産運用の代行を、生身の人間を介さず、ウェブ上で完結させるサービス」であるとはいえ、オンライン上のマニュアルを、該当箇所を探しながら、細かい文字を眺めて「うーうー」うなるよりも、相談員に訊けば一発で解決する問題も多いものです。
ロボアドのよさとマンツーマンの良さを合わせ持つ、すぐれたロボアドです。
下に、マネラップで「小額の資金を短期間、積極的に運用した場合」(左)と、「比較的多額の資金を長期に渡って保守的に運用・取崩した場合」(右)の損益シミュレーションの比較を掲載します。
マネックスアドバイザー
- 利用者の市況見通しに応じた最適な運用方針を決定
- 運用プラン変更のためのアドバイス提供
- ブラックロック社、マネックス証券の市況見通しも設定可能
- リターンのバラツキの計算根拠が不明瞭
運営会社 | マネックス証券株式会社 |
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セリングメッセージ | あなたが主役のロボアドバイザー |
ロボアドのタイプ | 投資一任型 |
ロボアド定義 | 運用方針を決めて、ロボットのサポートを受けながら自分で運用するサービス |
最低投資額 | 5万円 |
最低積立額 | 月1万円 |
利用手数料 | 0.487% |
ポートフォリオタイプ数 | 総数不明 |
主な運用商品 | 国内で上場されているETF、海外で上場されているETF |
マネックスアドバイザーは、マネックス証券株式会社が運営する、投資一任型ロボアドです。
利用者の市況見通しに応じた最適な運用方針を決定することができる、国内唯一のロボアドです。
運用プラン変更のためのアドバイスの提供を、ブラックロック社、マネックス証券から受けることができます。
おすすめの理由は、利用者の市況見通しをポートフォリオに反映可能であること。
株価や為替の動きは、キャッシュフローに直結しますが、これらに明確な見通しがある人は、ロボアドに指図したいところです。
同じマネックス証券で、マネラップとは別ブランドになっています。マネラップは初心者向けで、マネックスアドバイザーは中上級者向けです。投資初心者と中上級者では、求めるサービス内容も、サービスの費用構造も違いますから、賢明な処置ではないでしょうか。
投信工房
- 自由なカスタマイズで上級者にも対応
- 日・週・月単位の積立投資が可能
- リバランス積立と一括リバランスの選択が可
- 投信ブロガーとタイアップ
運営会社 | 松井証券株式会社 |
---|---|
セリングメッセージ | 低コストで簡単・手軽!投信工房 |
ロボアドのタイプ | アドバイス型 |
ロボアド定義 | 資産運用をトータルサポートするサービス |
最低投資額 | 100円 |
最低積立額 | 日・週・月100円 |
利用手数料 | 0.392% |
ポートフォリオタイプ数 | 運用コースとリスク許容度の組合せで15種類 |
主な運用商品 | 国内で販売されている投資信託 |
投信工房は、松井証券株式会社が運営する、アドバイス型ロボアドです。
自由なカスタマイズで上級者にも対応しています。日・週・月単位の積立投資が可能なのもユニークです。
リバランス積立と一括リバランスの選択が可能。投信ブロガーとタイアップしているのが、投資オタクっぽいです。
おすすめの理由は、リバランス積立と一括リバランスの選択が可能なこと。
リバランスとは、投資対象の割合の再調整のことですが、これを頻繁な売買によっておこなうと、取引手数料がかかって、かえって損をしてしまいがちなのです。
リバランス積立は、「ノーセール」(売り無し)でリバランスを行うので、余計な取引手数料がかかりません。複利と長期投資を前提にすれば、取引手数料の節約は、運用成績に大きく効いてきます。
下に、投信工房で「100万円の資金を積極的に運用した場合」(左)と、「100万円の資金を保守的に運用した場合」(右)の損益シミュレーションの比較を掲載します。
ロボアドバイザー比較一覧
投資一任型のロボアドバイザー比較
楽ラップ | THEO | WealthNavi | マネラップ | マネックス アドバイザー |
ダイワファンドラップ オンライン |
クロエ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
運営会社 | 楽天証券 | お金のデザイン | ウェルスナビ | マネックス証券 | マネックス証券 | 大和証券 | エイト証券 |
タイプ | 投資一任型 | 投資一任型 | 投資一任型 | 投資一任型 | 投資一任型 | 投資一任型 | 投資一任型 |
最低投資額 | 10万円 | 1万円 | 10万円 | 1,000円 | 5万円 | 50万円 | 1万円 |
利用手数料 | 最大0.990% | 1.00% | 1.00% | 1.00%未満 | 0.487% | 1.00% | 0.88% |
ポートフォリオ タイプ数 |
リスク許容度に 基づき9通り |
運用ニーズに 基づき231通り |
リスク許容度に 基づき5通り |
リスク許容度に 基づき8通り |
総数不明 | リスク許容度に 基づき9通り |
リスク許容度に 基づき3通り |
主な 運用商品 |
国内販売の 投資信託 |
米国市場上場 の海外ETF |
米国市場上場 の海外ETF |
国内上場ETF | 国内上場ETF 海外上場ETF |
自社の インデックス |
国内上場ETF |
アドバイス型のロボアドバイザー比較
投信工房 | SMART FOLIO |
ポートスター | SBI ファンドロボ |
fund eye | 野村の ゴールベース |
カライス | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
運営会社 | 松井証券 | みずほ銀行 | 三菱東京UFJ銀行 | SBI証券 | SMBC日興証券 | 野村證券 | 東海東京証券 |
タイプ | アドバイス型 | アドバイス型 | アドバイス型 | アドバイス型 | アドバイス型 | アドバイス型 | アドバイス型 |
最低投資額 | 100円 | なし | 5万円 | なし | なし | なし | なし |
利用手数料 | 0.392% | 0.550% | 0.50% | 無料 | 選択した投資信託 の信託報酬のみ |
購入時手数料1.08% +信託報酬年1.49% |
0.50% |
ポートフォリオ タイプ数 |
運用コースと リスク許容度の 組合せで15種類 |
リスク許容度 に基づき9通り |
リスク許容度 により5種類 |
国内投資信託 約5,000本 |
国内投資信託 約5,000本 |
リスク許容度 に基づき5通り |
リスク許容度 に基づき5通り |
主な運用商品 | 国内販売の 投資信託 |
自社i-mizuho インデックス |
自社eMAXIS バランスファンド |
国内販売の 投資信託 |
国内販売の 投資信託 |
自社 のむラップ・ファンド |
eMAXIS バランスファンド |
ロボットアドバイザーのデメリット2つ
実は、現時点のロボットアドバイザーのサービスは、完全には「ウェブ上で完結」しないのです。
以下の2つの限界があります。
- 自分の資産のうち、「ロボアドに運用代行してもらう資金」の適切な額がわからない
- ロボットアドバイザーはローリターンの運用しかしてくれない
自分の資産のうち「ロボアドに運用代行してもらう資金」の適切な額がわからない
下の図をご覧下さい。
『資産運用の一連の流れ』において、「ロボアドが面倒をみてくれる範囲」をロボアド業者ごとに表にしたものです。
資産運用の一連の流れ
○(緑)=「面倒をみてくれる」、△(黄)=「少しだけ面倒をみてくれる」、×(赤)=「面倒をみてくれない」
投資一任型:実際の資産運用までを代行/アドバイス型:投資アドバイスのみ
アドバイス型のロボアドが、オペレーション(運用)の部分の面倒をみてくれないのは当然ですが、その他にも「赤のセル」(面倒をみてくれない)が多いことがお分かり頂けると思います。
なかでも決定的な問題点が、「ロボアドで運用する資金」の額を、ロボアドユーザー自身にエイヤー方式(投げやりな感覚)で決めさせてしまっていることです。
大分類の「プランニング」(計画)における、『資産分配計画B』がそれに当たります。
本来、「ロボアドに運用代行してもらう資金」の額を合理的に決定するには、人生設計・家計の状況・リスク許容度等に関する、詳細なプロファイリング(個性の特定)に基づかなければなりません。
そして、得られたプロファイルに基づき、各自の保有する「金融資産」を、「生活資金」と「運用資金」にわける必要があります。
資産分配計画A
金融資産 = 生活資金 + 運用資金
そして、そのうち「運用資金」を、さらに「ロボアドに運用代行してもらう資金」と「その他で運用する資金」に分けなければなりません。
資産分配計画B
運用資金 =ロボアドに運用代行してもらう資金 + その他で運用する資金
ところが、このような手順を踏まずに、「ロボアドに運用代行してもらう資金」の額を、ロボアドユーザー自身に「なんとなくこれくらい」という水準に決めさせてしまっています。
その結果、「資産運用の一連の流れ」における上流のプロセスが、「いい加減」(×と△だらけ)になってしまっているのです。
この点について、「ユーザーは年齢や資産運用の経験経験等、わずか九個の簡単な質問に答えることによって、ポートフォリオ(投資対象の構成比率)を構築することができます。答えるのにたった二、三分しかかからない質問でポートフォリオが組めるなんて簡単すぎるのではないか、と思う人もいるかもしれませんが、その人が置かれている環境を把握して、投資性向を見極める素地としては十分な数です」 という、ロボアド業者からの反論もあります。
がしかし、それは、『資産分配計画C』の話です。
資産分配計画C
ロボアドで運用する資金 = 国内株式 + 外国株式 + 国内債券 + 外国債券 + etc.
投資性向(投資に対する姿勢)だけ見極めても、身の丈にあった「ロボアドに運用代行してもらう資金」の額(資産分配計画Bで決定)が見えてこないのです。
誤解して頂きたくないのですが、私は現時点のロボットアドバイザーを否定したり、批判しているわけではありません。
現時点のロボットアドバイザーは「不完全なところがある」ので、ロボアドユーザーの方で、それを補って利用する必要がある、と言いたいのです。
THEOによる運用シミュレーション
次に、下のグラフをご覧下さい。
リーマンショックの際、一時的に「運用中の資金」が半減しています。
仮にこのタイミングで、失業・災害・長期入院等の不幸に見舞われて、手元の「現金」が不足したとすれば、「運用中の資金」を元値の半分で処分しなければなりません。
さらに、悪いことに、「リーマンショックのような恐慌」と「自身の失業」は、タイミングが同期しやすいのです。まさに泣きっ面に蜂です。これは無視できないリスクです。
くれぐれも、「ロボアドに運用代行してもらう資金」を多くしすぎて、過剰なリスクをとらないようにして下さい。
短期的には資金50%減のリスクがあるのです。リスクのとりすぎは、ロボアド投資に限らず、すべての投資において破滅の元です。
ロボアド運用資金の適切な決め方
では、「ロボアドに運用代行してもらう資金」の額を適切に決定するには、どうすればいいのでしょうか?
プロのファイナンシャルプランナーに依頼するのも一つの選択肢でしょうし、ご自身でファイナンシャルプランナー向けの本を読まれるのもよいと思います。
『パーソナルファイナンス FPテキスト1 平成28年度』(日本FP協会)
ファイナンシャルプランナーたちが用いる手法は、体系的かつ精度が高いですし、人生とお金に対する新たな視点も与えてくれると思います。
もともと、ロボアドバイザーが最初に日本に紹介された当時には、「ファイナンシャルプランナーの失業」の未来予測が報じられたものです。
ところが、実際には、『資産運用の一連の流れ』において、ファイナンシャルプランナーとの競合プロセス(プロファイリング/設計/計画)は自動化が進まず、運用のプロセスの自動化のみが進んでいます。
『資産運用の一連の流れ』における、自動化のさらなる進展に注目しています。
ロボットアドバイザーはローリターンの運用しかしてくれない
現時点でのロボットアドバイザーは、ローリターンの運用しかしてくれないのも大きな制約です。
現時点でのロボアドバイザー投資は、実質的には「国際分散されたインデックス投資」なのです。←重要
このインデックス投資は、実は、ローリターン、かつ、とても時間のかかる投資法なのです。
インデックス投資
インデックス投資とは、日経平均やTOPIX、S&P500、ダウ平均のような株価指数(インデックス)と同じ値動きを目指す投資方法のことです。
例えば、日経平均が5%上昇したら、自分の資産も同じく5%上昇するような投資方法のことです。
引用:わたしのインデックス
その手段は、「市場を構成する全ての銘柄をその構成比率どおりに保有して、市場平均並みの収益率を確保する」ことです。
そして、その優位性は、インデックス投資が「資本主義経済の永続的な成長性」をとり込んでいることにあります。
そのココロは、「資本主義経済は、短期的には上げ下げの循環の中にあっても、20年30年の長期で見ればインフレを伴いながら緩やかに成長していく可能性が高い」(ZAi ONLINE)という意味です。
インデックス投資を正しく理解するためには、ある程度の投資理論の学習が必要となります。
この点について、
運用初心者が投資理論を理解することは困難であり、投資理論の習得に時間を費やすのは専門家になるのでない限り時間の浪費です
とする見解もあります。
がしかし、このような「ゼロ」か「イチ」か、「勉強するか」「まったく勉強しないか」の極論ではなく、運用初心者が、どの程度まで投資理論の習得に時間を費やすべきか、「費用対効果が最大となる最適水準」を提示するのが、真の投資アドバイザーではないでしょうか?
私は、運用初心者についても、「インデックス投資とアクティブ投資のちがい」については理解しておいた方が良いと考えます。
ここでは、インデックス投資について、その本質を確認しておきたいと思います。
インデックス投資の本質は、「自らの裁量(判断)を捨て」「時間と資本主義経済を味方につける」ことにあります。
「自らの裁量を捨て」とは、現在割安であるとか割高であるとかの、自分の値ごろ感を持たないことです。「市場を構成する全ての銘柄をその構成比率どおりに保有」というルールに基づいて、機械的に売買します。
それによって、「時間」と「資本主義経済」という、非常に強力な味方をつけるのです。
インデックス投資を積み立て方式で行った場合、「10年後の勝率は9割」という検証結果もあります。(日経マネー)
ただし、10年以上のスパンでの運用が基本ですので、「貯金感覚」でロボアドバイザーの口座に入金しておくと、現金が必要なときに時価が落ち込んでいて、現金化するにできず、困ってしまう恐れがあります。
つまり、10年以上のスパンで見れば「勝率9割」だが、10年未満のスパンで見れば「運用資産を半分に減らす可能性もある」、リスキーな投資法です。
短期的にはハイリスク・ローリターンなのです。このことをいま一度、心にとどめておいて頂ければと思います。
ロボアドバイザーはこんな人におすすめ
皆さんは、すでにロボアドバイザーによる無料診断を体験されましたでしょうか?
下の画像は、楽天証券の『楽ラップ』の無料診断の結果、提案されたポートフォリオ(投資対象の構成比率)です。
楽ラップの無料診断結果
おおむね、「国内株式」「外国株式」「国内債券」「外国債券」で構成されています。
さらに、次の画像は、わが国のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオです。
どうですか、似てるでしょう?
割合こそ異なるものの、やはり「国内株式」「外国株式」「国内債券」「外国債券」で構成されています。
つまり、ロボアドのお金の増やし方と、日本の年金制度のお金の増やし方は、非常に似通っているのです。
ですので、結論からいえば、ロボアドをおすすめしたいのは、
- 老後資金の積み立てが投資目的 かつ
- インデックス投資を自分でする時間またはスキルがない
人となります。
老後資金の積み立てが投資目的の人
実は、日本の年金制度は現在、制度的な危機にあります。
「年金制度については、(すでに多くの人が感じていることと思いますが、)現行の制度は、公的も私的も、おそらくそのまま維持することはむずかしいと思われます」 (ロボアドバイザーの資産運用革命)
そして、じつはじつは、日本政府ももはや、年金制度の維持をなかば放棄し、国民には(ロボアド等による)インデックス投資によって老後資金をまかなって欲しい、という意向があるのです。
それが証拠に、積み立てによるインデックス投資には、非常に手厚い税的優遇制度がしかれています。
DCもNISAも、利用できる範囲や金額が大きくなるのは、それ自体が投資家にとって歓迎すべき変化ですが、今、こうした動きが政府側で次々にあることの背景には、将来の公的年金の実質的な『使いで』が縮小していかざるを得ないという見通しがあるように思われます。
『自分で老後に備えたい人のためには、そのための制度は用意してありましたよ』と将来言えるようにするアリバイ作りのニュアンスを感じます。
あるいは、『将来への備えは自分でやってください』という政府からのメッセージだと考えてもいいでしょう。
インデックス投資の本質は「自らの裁量を捨て」「資本主義経済を味方につける」ことでしたが、このうち前者の「自らの裁量を捨て」に注目すれば、「ロボアドに運用代行してもらう資金」の投下は、「一括投資」よりも「積み立て投資」が整合的となります。
投資のタイミングを選ぶ必要のある一括投資とちがい、積み立て投資は「毎月いくら」といったルールに基づき、機械的に資金を投入するからです。
インデックス投資を自分でする時間またはスキルがない人
投資目的が老後資金の積み立てであったとしても、「インデックス投資を自分でする時間、またはスキルがない」人にしか、ロボアドはおすすめできません。
時間とスキルがある人は、ロボアドに頼らず自分でインデックス投資をした方が、手数料もかからないし、銘柄の制約もないからです。
積み立てによるインデックス投資のやり方を知りたい方は、下記の書籍をご参照下さい。決して難しい内容ではなく、週末のうち一日を使えば、理解可能です。
ロボアドバイザーをおすすめしない人
- 老後資金の積み立て以外が投資目的の人
- インデックス投資を自分でする時間またはスキルがある人
老後資金の積み立て以外が投資目的の人
インデックス投資が、10年以内の現金化を要する場合には不向きなことはすでに述べました。
実は、現金化に際して、もうひとつ大きな制約があります。
投下資金をいちどきに現金化することはできないのです。仮に20~30年の運用期間を経た後であっても同様です。やってできないことはないのですが、それでは「時間を敵に回す」ことになります。
いちどきに現金化すると、そのときの時価次第で、最終的な運用利回りが大きくなったり、小さくなったりして、期待していた利回りからブレてしまう可能性が高いです。
回収のタイミング次第では、当初の目標額を「大幅に」下回るリスクがあります。期待通りの利回りを実現するためには、少しずつ現金化する必要があります。
ですから、インデックス投資と、それをロボットアドバイザーに代行してもらうロボアド投資は、
- 使途未定の『貯金』
- 長期入院に備えた『引当金』
- 結婚に備えた『準備金』
いずれにも不向きなのです。
ロボアド投資は、毎月の同額の積み立てと、毎月の同額の取り崩しによるべきなのです。まさしく年金制度です。ロボアド投資は、老後資金の積み立てにのみに適した投資法です。
投資期間 | 投資時 | 回収時 |
---|---|---|
10年以内 × | 一括投資 ○ | 一括回収 △ |
10~20年 〇 | 積立投資 ○ | 取崩回収 ◎ |
20年以上 ◎ |
【投資期間】
10年以内=「資本主義経済の永続的な成長性」の前提が活かせない
10~20年=上記を活かせる
20年以上=上記を最大限に活かせる
【投資時】
一括投資=「資本主義経済」の前提を活かすには有利だが、高値圏での参入はリスクが大きい
積立投資=時間的リスク分散が図れる
【回収方法】
一括回収=回収のタイミング次第では、期待値(当初の目標額)を大幅に下回るリスクがある
取崩回収=「資本主義」の前提を活かしたまま、時間的リスク分散が図れる
インデックス投資を自分でする時間またはスキルがある人
前述のとおり、積み立てによるインデックス投資が自分でできる人に、あえてロボアドに頼るメリットはありません。
ロボアドバイザーのリスクを理解する
目的別に複数のロボアドバイザー口座を使い分けする
投下資金をいちどきには現金化できないのは、先に述べた通りです。資金効率を維持するには、投下資金を徐々に取り崩さなければなりません。
なので、新車購入資金や結婚式資金などのゴールベース(目的から逆算するタイプ)の貯金には、インデックス投資は不向きです。
しかし、「リスクをとる」腹をくくることで、このようなゴールベースの貯金にも、インデックス投資を用いることが可能となります。
たとえば、新車購入資金であれば、「購入予定時期に運用成績好調ならBMW、不調なら日産マーチでがまんする」というふうに。結婚式資金であれば、「運用が好調なら都心の高級ホテルで派手婚、不調ならローカルの結婚式場で地味婚でがまんする」といった具合です。
貯金のゴール(目的)ごとに、ロボアド業者の口座を用意するのもよいでしょう。
どんぶり勘定の口座で、どんぶり勘定のリスク許容度で運用するのではなく、ゴールごとに分けた口座で、ゴールごとのリスク許容度で運用するのです。
先の新車購入資金や結婚式資金であれば、いざというときは節約することも可能なので、ロボアド口座でリスク許容度を高めに設定して運用できます。
が、長期入院の引当金の場合は、入院費を節約するには限度がありますから、ロボアド口座でリスク許容度を低めに設定して運用するか、無リスク資産でキープする、といった具合です。
ロボアド口座を使わず、ETF/投資信託で運用する場合も、ゴールごとにETF/投資信託の銘柄を変えるなど、リスクテイクのコントラストをつけた方がよいでしょう。
「メンタルアカウンティング」(心の会計)という言葉がありますが、結婚式なら結婚式用の資金、長期入院なら長期入院用の資金というふうに、切り分けして資金を管理しておかないと、「運用がうまくいかなかったとき」に、納得がいかないからです。
人生に悔いを残すような意思決定は、ロボアド運用においても避けたいものです。
また、複数のロボアド口座を持つことは、ロボアド会社破綻(可能性は低いと思いますが)に備えた、リスク分散にもつながります。
恐慌時にも利益を出せる仕組みに期待
インデックス投資は、長期投資なので、その長い期間の間には、次々とおとずれる景気循環の大波小波に揉まれるという、必然的な運命があります。
景気循環の名称 | 周期 | 主な要因 |
---|---|---|
キッチンの波 | 2-4年 | 在庫投資の調整 |
ジュグラーの波 | 10年 | 設備投資の変動 |
クズネッツの波 | 20年 | 建設・建築 |
コンドラチェフの波 | 50-60年 | 技術革新 |
景気循環における不況期には、「ロボアドに運用代行してもらう資金」の時価も下落します。
特に恐ろしいのが、リーマンショックのような恐慌です。運用額が一時的に半減することもあります。
現在は、米国株式が歴史的な高値圏にあり、近々大きな下落があるのではないか、と言われています。世界経済はおたがいに結び付いているので、米国株式が下落すれば、他の先進国や新興国の株式も下落する可能性が高いです。ロボアド運用も大打撃間違いなしです。
ところが、このピンチをチャンスに変える、魔法のような投資法があります。「恐慌の際に大きな利益が出る」というポートフォリオの組み方があるのです。
それは、『伝統的なインデックス投資』のポートフォリオに、VIX(恐怖指数)と金(ゴールド)のETFを加えるのですが、本稿では、そのような投資法が存在することを紹介するのみにとどめておきます。
詳しくは、下記の書籍をご参照下さい。
この方法は、いわばインデックス投資の『裏技』であり、運用初心者の守備範囲を逸脱するものです。むしろ、株価暴落時に大きく収益しようとする、攻撃的なポートフォリオです。
個人的には、このような初心者の手の届かない「恐慌時のリスクヘッジ」まで自動化してこそ、真のロボアドバイザーだと思うのですが、『伝統的なインデックス投資』にとどまっているのが、現時点でのロボアドバイザーの実情です。